ロタウイルスは直径70nmのRNA遺伝子をもち、11本もの分節型遺伝子で構造されている珍しいウイルス構造体をもつウイルスです。
※1nm=100万分の1ミリ
ロタウイルスは主に「乳幼児」に多く感染し、感染症を発症すると「胃腸炎」を発症します。
胃腸炎を発症するロタウイルスは『A群・B群・C群』の3種類のロタウイルスに分類されますが、乳幼児や子供が感染するロタウイルスの大半はA群です。
季節的には冬場に多く発症する傾向にあり、乳幼児が多く発症する冬場の「嘔吐下痢症(おうとげりしょう)」の原因の約80%以上は、このロタウイルスが原因です。
ロタウイルス感染症の症状の特徴について見ていきましょう。
ロタウイルス感染症の症状の最大の特徴は、「嘔吐症状」と「下痢症状」の発症です。
嘔吐症状に関しては、個人差があり発症しないケースもありますが下痢症状はほとんどの感染者が発症します。
これはロタウイルスの感染によって「胃腸炎」を発症する為です。
ロタウイルス感染症の基本的な症状を以下にまとめます。
ロタウイルス感染症の主な症状の一覧を見てみましょう。
【ロタウイルス感染症の主な症状一覧】
☆嘔吐症状(嘔吐症状は突然発症します)
☆発熱症状(初期段階)
☆下痢症状
☆下痢による脱水症状
ロタウイルス感染症の症状のひとつである下痢症状に関しては一般的な下痢症状との大きな違として「お米のとぎ汁のような白色の便」が確認される点があげられます。
この便の特徴からロタウイルス感染症は「白色便下痢症」とも呼ばれております。
ロタウイルス感染症の疑いがある場合は、便の色を確認することも診断基準のひとつとなります。
ロタウイルスの潜伏期間は、一般的に1日~2日程度と言われております。(長くても72時間以内)
潜伏期間とは、ウイルスが体内に侵入してからロタウイルス感染症の症状を発症するまでの期間のことです。
潜伏期間を得てロタウイルス感染症の症状を発症すると、まず軽い発熱が発症し、続いて「嘔吐症状」「下痢症状」が始まります。
嘔吐症状は、比較的重いケースが多く、1日に5~6回程度嘔吐するのもロタウイルス感染症の症状の特徴です。
尚、発熱は症状の発症時のみですぐに収まります。(通常最初の1日のみ)
ロタウイルス感染症は潜伏期間が非常に短く、局所的に発症する感染症である為、免疫が正常に構築されるケースは非常に稀です。
その為、一度感染しても、1年以内に度々再感染を繰り返すケースも多く見られます。
ロタウイルス感染症の治療法について見ていきましょう。
ロタウイルス感染症はその名の通り、「ウイルス性疾患」ですが、現在のところロタウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。
ですから、ロタウイルス感染症の治療に関しては「自然治癒力による回復」を積極的に考えて安静第一の治療を行うことになります。
治療の基本は、何よりも安静にすごすこと。
発症時は発熱を伴い、寒気やふるえを感じることもあるので暖かい服装を心がけましょう。
治療期間に注意点すべき点としては「下痢による脱水症状」を避けるために、水分の補給を積極的に行うことです。
乳幼児の場合は、「湯さまし」「お茶」「イオン飲料」などを少しずつ回数を多めに摂取させるように心がけましょう。
脱水症状を起こすと、自覚症状がきつくなり更に回復もおくれてしまうので注意が必要です。
乳幼児の場合は、水分の補給を受け付けず吐き出してしまうケースも多く見られます。
このようなケースでは、水分補給を受け付けない状況であることを医師に相談しましょう。
病院では「点滴」によって水分補給と栄養補給を行うことも可能です。
尚、ロタウイルス感染症は胃腸炎を発症する感染症ですから、治療中の食事に関しては、胃に負担をかけないものを摂取することが大切です。
乳幼児の場合は「バナナ」「おろしりんご」「おかゆ」などから少しずつ与え、体力が回復してきたらおかずを加えていくことが大切です。
ロタウイルス感染症がしっかり改善するまでの治療期間は1週間程度、長くても10日以内に回復します。
ロタウイルス感染症は乳幼児から子供そして大人まで、幅広い世代に感染する可能性をもつとても身近なウイルスです。
5歳程度までに一度はロタウイルス感染症を誰もが経験すると言われております。
中でも圧倒的にロタウイルス感染症の感染が多いのは乳幼児です。
生後4カ月~2歳程度までの乳幼児がロタウイルス感染症に感染すると、ロタウイルスの症状のひとつである「下痢症状」が非常に重い症状となるケースが確認されておりますので注意が必要です。
ただし、過度な心配をする必要はありません。
重い下痢症状が続くと、赤ちゃんの場合はとくに「脱水症状」をおこしやすくなるので、こまめに水分補給を行うよう心がけましょう。
日本では、ロタウイルス感染症による乳幼児の死亡はほとんどありません。
しかし、医療の発達していない途上国などでは毎年多くの乳幼児がロタウイルス感染症によって亡くなっているのが現状です。
世界的には年間約70万人~100万人の乳幼児がロタウイルス感染症による急性胃腸炎によって毎年のように亡くなっております。
ロタウイルス感染症は、とても身近な感染症ではありますが、決して軽視できないウイルス疾患であるのもまた事実です。
ロタウイルス感染症は乳幼児に限らず、大人も感染するウイルス疾患です。
大人がロタウイルス感染症に感染するケースの70%以上は子供から二次感染するケースです。
ですから乳幼児や園児・小学生がいる家庭のお父さん、お母さんはロタウイルス感染症に感染する可能性が高くなります。
二次感染の主な経路は、感染者の「便・嘔吐物」によって感染する経路です。
直接手に触れなくてもウイルスは空気中にも漂っているので感染します。
おむつを交換する際や、嘔吐物の処理をする際は、使い捨ての手袋などを使用し、かつマスクの着用が必要となります。
大人がロタウイルス感染症に感染した場合の症状も、一般的な症状と同様の症状を発症します。
しかし乳幼児などの症状と比較すると症状は軽症であるのが特徴です。
下痢症状は2~3日続きますが、大半のケースで3日~1週間以内に体調も回復してきます。